バストアップのデッサンが安定しない場合、
大抵は首、肩、胸の立体、構成する筋肉を見逃している可能性が大です。
また、人体のパーツは骨と筋肉が複雑に連動しているので、
1つのパーツだけに注目してもあまり良い効果はありません。
バストアップ(前部)を強化する場合、
最低でも以下の筋肉と骨の情報が必要です。
首、肩周りの簡略図。
首周りで目だった筋肉はピンク色の僧帽筋と胸鎖乳突筋の2つ。
黄色の部分は窪んだ箇所に筋肉が密集し、
そこを皮膚でふさいでいるような状態なので普段は形は滑らか。
ですが他の部位が稼動すると大きく窪んだりします。
可動域の認識も大事です。
可動域さえ把握しておけば、不自然なデッサンは大幅に減ります。
大胸筋は図の通り、上腕骨についているため、
肩の動きにダイレクトに影響します。
腕の可動と共に大胸筋は同じ方向に引っ張られて伸びます。
また、腕を上に上げるごとに肩はどんどんと後ろに回転し、
三角筋も後ろに回りこみます。
その結果ブラ紐もねじれて引っ張られ、ラインの流れが大きく変わります。
僧帽筋は(前部では)ほとんど変化せず、
変わりに首周りの肉が窪んだようになります。
腕を前に突き出すと大胸筋も伸縮します。
これらの肉の伸縮は一見不要に見えますが、
服を着せたときに大きな変化になって現れます。
「きちんとデッサンをしたのに、服を着せたらペラペラな身体になってしまった」
ということがよくありますが、
これは身体の肉感をきちんと把握していないため、
服にもその立体を乗せられないのが原因です。
ポーズ人形だけで理想の人体が描けない理由
ポーズ人形や3Dモデルをはじめて使った時私は、
「これで憧れの作家さんのように人体が思いのままに描ける!」
と歓喜したのですが、実際は大きな落とし穴がありました。
ポーズ人形には筋肉の連動と伸縮がありません。
可動による筋肉の伸縮が見せる肉感はかなりのものです。
なので筋肉と骨の知識がないままにポーズ人形を真似ると肉感が乗らず、
バランスはいいけど動きやポーズが固い絵になってしまいます。
絵を描かない人でも人体は常に見慣れているので、
肉感の色気と力強さにはかなり反応します。
ポーズ人形だけに頼っているといつか表現の限界にぶつかります。
最近はどんどんリアルなモデルが出ていますが、
私の場合、大量作画の漫画で逐一ポーズを作り、
見て描く行為はかなりのストレスでした。
さらには
「簡単なポーズですら見ないと不安」というドツボにはまり
大きく自信喪失する結果となりました。
下はポーズ人形風のデッサン(左)と
筋肉、骨、腱を意識したデッサン(右)です。
どちらもバランスは同じですが、肉の輪郭とパーツの細かな凹凸、
キャラの動きやアクションに必要な躍動感に大きな差が出てきます。
人体表現にこだわりがある場合、それが必要なジャンルによっては、
身体の内部構造と立体は早めに把握、習得しておくのが効率化の近道です。
デッサンの安定は「描いては消し」のストレスを減らし、満足度を増やし、
将来的なスピード効率を大幅に上げてくれます。
PIXIV FANBOXで有料の『デッサン講座』を行っています。
解剖学や技法などの理論に基づいた理解を深めたい方は
画像をクリックしてページに飛んでください↓
関連素材